古本屋が選ぶ本当に面白い映画の本
そもそも映画業界に足を入れて、それが縁で古本屋になった。この機会に読んで本当に面白い映画の本を紹介する。
・増補 友よ映画よ、わがヌーヴェル・ヴァーグ誌 (平凡社ライブラリー) 山田宏一
山田宏一がヌーヴェル・ヴァーグがまさに沸き立っていたフランスで、ゴダール、トリュフォーなどと過ごした日々が綴られた青春の記録である。映画より面白くて、映画より映画的な日々に感動する。映画業界は古本業界と同じでその中に居るよりも、外から内幕を描いた本を読んだ方が断然面白い。是非、この本を実写で映画化して欲しい。
・幻のキネマ満映 甘粕正彦と活動屋群像(平凡社ライブラリー) 山口猛
かつて満州にあった「満州映画協会」の短い興亡を描いた労作。内田吐夢、李香蘭、加藤泰などが参集したこの協会の本当の姿はもう追うべくもない。まるで新選組のようなこの組織の面白さが1冊に詰まったお得な作品。映画を通して当時の日本は何をしたかったのか。それは想像しても今はもう意味はない。しかし、忘れないためにもこの本は読んでおきたい。
・千本組始末記 アナキストヤクザ笹井末三郎の映画渡世 平凡社 柏木隆法
かつて千本三条あたりにあった「千本組」にいた侠客笹井末三郎がヤクザでありながら映画が日本に生まれ隆盛する時期に大活躍した姿が描かれた本作は映画史にはなかなか現れないだけに、面白い。映画はどこか後めたい娯楽として始まったのがうなずける。映画なんか不良が見るもんだという社会通念が昔はあった。映画はどこまでいってもサブカルチャーであって欲しい。あの暗闇はデートではなく、ひとりでこっそり見るためにある。
紹介した3冊は今すぐにでも手に入るので、興味のある方は是非。映画なんか面白ければなんでもいい。映画の本も読んで面白くなければそのうち忘れられる。
画像はゴダールの「女と男のいる舗道」のスチールです。