一枚の色紙から感じる古本屋冥利 京都スターブックス

一枚の色紙から感じる古本屋冥利 京都スターブックス
最近私がとある業者の市場で入手した1枚の色紙をご紹介します。それは、「団十郎三代 紀念」と題したもので、映画が完成したのを記念して関係者が寄書型式で書いたものです。映画「団十郎三代」は1944年戦時中に公開された作品で監督は溝口健二。フィルムが国立映画アーカイブにもなく、現在では観る事ができません。溝口の芸道モノに分類される作品でしょうかサインをしているのは、溝口健二、田中絹代、吉井勇、甲斐庄楠音、清水光、山本修二色紙にイラストがあり、これは甲斐庄楠音が田中絹代を描いたものと推察されます。(いや、そうであって欲しい)
今はもう観ることのできないこの映画はこういった資料でその面影をさぐるしかなく、色紙を見た瞬間感動しました。古本屋をやっていて良かったと思うのはこんな物に出会えるからです。溝口、田中絹代、甲斐庄のサインがあって、甲斐庄が描いた田中絹代のイラストまであるのは奇跡みたいなものです。
ちなみに山本修二は学者で歌舞伎評論家、清水光は映画評論家です。
何百年経っても映画監督溝口健二は巨匠として語り継がれるでしょう。この色紙も一緒に残って欲しい。
一人、事務所でニタニタして、気がすんだら売りに出します。古本屋の仕事とは確認できない未来に賭ける事でもあります。