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京響フライデーナイトスペシャル

京響フライデーナイトスペシャル                     其中堂 三浦了三

大学を出てはや40年、つまり古本屋になって40年も経ってしまった。いったいどれだけ成長したんだろう。お金儲けじたいは、本を知らない頃のほうが儲かっていた可能性もあるけれど、いまとなって、きちんと本の声を聞き分けられるようになったかどうか、めちゃくちゃ怪しい。

さて、今週末、ひさびさに京響のコンサートに出掛けた。さいきん流行りの週末金曜日、遅く始めて早く終る、休憩抜きの1時間ちょいのコンサートである。

その前に、京響との長ーいおつきあいをちょっと振り返ってみよう。

京響との出会いは、小学校の時、集団音楽鑑賞で京都会館。こういうのが公営オーケストラの強みで、ありがたい。京都会館の中央入口で天井を見上げながらホールに入った記憶は消えない。もう今はなくなったようだが、各地域の小中学校での巡回コンサートも公営ならではだった。

大学時代には、クラブ先輩の院生さんに連れてもらって定演に何度か。クラシックの基礎も身についてないのに、コンサート後には、なぜだか尾花コンマスさんのおごりで居酒屋で音楽談義。

古本屋になってからは、時間とお金があるので、定期会員。井上道義が常任になる前のころなので、技術的には不安定な時代で、ホルンがひっくり返る日常。

子どもを連れて行ったのは、3年続けて佐渡裕が客演の時のコンサートホールP席。強奏時はカッコいいんですよ。

で、時間は飛んで、フライデーナイト。バルトークのオケコンにつられて足を運んだのだが、実によい演奏。バルトークの音色の混ぜ方(特に木管の組み合わせ)に舌を巻きながら、しかしこれが音として聞けるのはメンバーの技術だけでなくて、理解と愛とたゆまぬ向上心なんだよなぁ、、。40年前には曲に振り回されていた京響が、いまや曲でなにかを語るんだ、感慨深い。

幕開けのロンカプ(羽生結弦で有名になった)は、ストラディバリウスの芳醇な音色に酔いしれるばかりでなく、ソリストの金川さんの、たくまざるように聞こえるまでに磨き上げた音楽づくりのすばらしさ。アンコールのサマータイムの、ルバートとポルタメントがさも当たり前でさりげなくて美しくて切なくて心に寄り添って聞こえるのは、深い造詣(音楽理解や技術だけでなく、音楽にかぎらない芸術の本質に対する深い理解と実践)があってこそ、と心打たれたのでありました。

とまあ、そいういことだ。古本の値段とか知識とか、テクニカルなことのみに振り回されてはいけない。表現者としての古本屋になるためには、もっと深いところを突いていかないといけない。この40年は準備期間と割り切って、あと20年がんばるぞぉ!

※P席…ポディウム席。舞台の後ろの席。指揮者の表情や動きがしっかり見える席。
※バルトークのオケコン…バルトーク作曲「オーケストラのための協奏曲」
※ロンカプ…サン・サーンス作曲「序奏とロンド・カプリチオーソ」
※サマータイム…ガーシュウィン作曲オペラ「ポーギーとベス」からソプラノ独唱「サマータイム」。この日演奏されたのは、ハイフェッツ編曲のバイオリン独奏曲。

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